主治医の訃報

(ブログに書こうかとも思ったのですが,公開範囲を容易に限定出来るmixi日記にとりあえず記しておくことにしました)

***

昨日は内定式で,今日は午前から眼科の定期検診だったので,そのまま実家横浜に滞在していました.今は戻ってきて小平です.

僕は今,ほとんど右目が見えていません.

中学3年のときに突如発症した網膜剥離という病気のためです.顔面に強い衝撃を受けるボクサーなどがかかりやすい病気で,高齢者も発症しやすいと聞きます.

僕のように中学生くらいの若者がかかることもないわけではないですが,おそらく珍しいとは思います.しかし,今は手術による治療法が確立されていて,一回での完治率は90%以上とも聞きます.

ただ,僕の場合は発症原因が不明であっただけでなく,手術入院も一度や二度ではありませんでした.もう空では数えられないや.

そんな病気に対し,発症当初から一緒に戦ってくれた先生がいました.

駅ビルの中にある小さな眼科で受けた診断は「大きな病院で検査してもらってください」とのこと.もらった紹介状を手に大学病院の眼科へ行きました.初診は何時間待ったことか.

最初は検診の度に異なる先生が診てくれていたのだけど,いつしか主治医の先生が固定になっていました.中学3年生の僕に対してしっかり説明してくれる先生で,おそらくその大学病院における眼科長.

網膜剥離の予防でレーザー治療をした時も,網膜剥離が発症して最初の手術をした時も,入院中の朝の定時検査の時も,再発して緊急入院した時も・・・いつもその先生でした.

だから,今回の定期検診もその先生での予約だったのです.

今は安定してる中での経過観察だから4ヵ月に1回の検診です.網膜は安定しているから,少しでも右目の光を取り戻すために角膜移植のドナーを待っているところ.

木曜日に実家へ帰ると,母親がこんなことを言いました.

「病院から電話があって,いつもの○○先生が外来の診察できないんだってさ.だからちょっと時間かかるかもって」

正直,「ふーん」って感じでした.外来以外にも入院患者を診なきゃいけないことや手術をしなきゃいけないことも知っていたし,何より眼科長だから何かと忙しいんだろうな,と.

そして,今日の検診.呼ばれた部屋には聞いていた通り,いつもとは別の先生が座っていて,「お電話を差し上げた通り,○○先生は外来での診察が出来ない状態なんですよ」と言いました.

母親が「入院患者さん方の診察とかもお忙しいんですかね?」というようなことを何気なく聞くと,その別の先生は少し顔をしかめた様子で,

「少し前に急変されまして・・・お亡くなりになられたんですよ」

と.僕は終始冷静というか,平静な感じだったけれど,内心は動揺とも狼狽とも言い難い,何か変な感覚に陥っていました.悲しいはずなんだけれど,どちらかと言うと切ないに近いような.

いつも検診の最初にしていた先生との簡単な雑談は近況報告のようにもなっていたのです.中学3年の時の高校受験合格,高校3年の時の大学受験合格,大学4年最初の内々定.

そして,今回は前日に内定式を終えていたからそのことを報告出来るかも,と少しだけ思っていたのです.仮に今回は別の先生であっても,その次は主治医の先生が戻ってきてるだろうと...

***

先生にとってみれば何十何百といる患者の中の一人.されど,僕にとっては何十何百といる眼科医の中のたった一人の主治医.

本当にお世話になりました.ありがとうございました.

そして,お疲れ様でした.